【東京新聞】川に気泡が…地盤補修工事を中断 東京・調布の外環道陥没事故

東京外郭環状道路(外環道)の大深度地下トンネル掘削で陥没した東京都調布市の地盤の補修工事が、付近を流れる川で気泡が発生したとして中断されたことが、東日本高速道路への取材で分かった。この気泡と工事との関連が疑われるためで、東日本高速が調査する方針。住民からは「工事が周囲の地盤を壊しているのでは」と不安の声が出ている。
◆作業を終えると気泡も止まった
 付近では2020年10月以降、地面の陥没や地中の空洞を計4カ所確認。地下40メートル以深の大深度をシールドマシンで掘削した影響とされ、一帯でも地盤の緩みが確認されたため、東日本高速は今年8月、補修材を圧縮空気とともに地中に送り込む工事に着手した。
 今月2日になって現場の建設会社職員が、施工地点の東側を流れる入間川の水面1カ所で気泡を発見。この日は補修範囲のうち2カ所で作業し、気泡が見つかった地点からはそれぞれ約20メートル、80メートルほど離れていた。作業を終えると気泡は止まったという。

 連休の休工を挟み、6日に予定されていた補修工事は取りやめた。東日本高速は工事による周辺への影響を確認するため今後、調査するという。気泡が出た原因については、6日夕の時点で明言しなかった。
 トンネル工事の全面差し止めを東日本高速などに求めた仮処分申請の原告側代理人・武内更一弁護士は取材に「地表から送り込んだ空気が地下を通って周辺の地盤を壊す危険性があり、(周辺の地権者の)財産権の侵害に当たる問題だ」と話した。(梅野光春)
◆工事前から出ていた圧縮空気への不安
 圧縮空気への懸念は騒音や振動も含め、工事に先立つ説明会でも住民から出ていた。これが現実になった形で、住民側は詳しい調査を求める要望書を東日本高速道路などに近く提出する。
 東日本高速は気泡の発生は作業終了後に止まったとしており、工事で圧縮空気が地中を通って補修範囲外の川まで移動した可能性が高い。川だったため気泡として目視できたが、周辺の地中に目に見えない圧縮空気が入り込み、地盤を緩める恐れも指摘される。
 補修範囲のそばに住む丸山重威さん(82)は「大深度トンネルは地上に影響ないと言っていたのに地盤補修が必要になり、その作業でまた悪影響が出る。外環道の建設そのものを中止する決断はできないのか」と疑問を投げかける。
 近くに住む女性(67)は「空気以外に、地中に噴射している補修材も周りに出ているのでは」と不安を募らせた。(花井勝規、梅野光春)

東京新聞 2023年11月7日